季節の話題より
11月7日の夕方、大町からの帰りに松本トンネルから梓川方面を眺めると、
山の麓に焚き火の煙が横に広がり、
田園を煙の毛布で覆っている幻想的な風景に思わずシャッターを切りました。
通常、上空にかけ気温は100mに付き0.65℃低下するので、
焚き火をすると煙はモクモクと上昇しますが、
この日は高気圧に覆われ風が無く、大気の温度が通常とは逆に上空の方が高くなり、
空気の上下方向の拡散を妨げられたので、
写真のように煙は上昇せずに横に広がりました。
この空気の層を「逆転層」と言います。
移動性の高気圧に覆われ、放射冷却により朝は冷えたものの、
島崎藤村「千曲川のスケッチ」(小六月:ころくがつ)に、
「・・・秋から冬に成る頃の小春日和は、この地方での最も忘れ難い、最も心地よい時の一つである。
俗に「小六月」とはその楽しさを言い顕した言葉だ。・・・」
とあるように、本当にのどかな日和で、その上逆転層が確認できた良い一日でした。
(信州民報 11月12日付け)
10月20日、記録的な大雨が降った鹿児島県の奄美大島(名瀬では1日に622mmの降水量)で、
奄美市住用町のグループホームが水につかり、3人が死亡する被害が出ました。
更に公民館や学校などで避難をした人は400名、床上床下浸水の被害が800戸、
崖崩れにより道路の寸断が13箇所にも及び、濁流により自動車などが流されたり、
倒木や土砂崩れで電線が切れ、一時最大で1万戸が停電しました。
グラフは6月〜10月25日までの、
上田と鹿児島と今回災害のあった奄美大島の名瀬の累積降水量を示します。
6月の梅雨から始まり、台風そして秋雨前線等により名瀬では2181mm、
鹿児島では1697mmの累積降水量となっています。
上田の723mmは例年に比べ多い方です。
6月〜7月の梅雨にかけ鹿児島で、1日100mm以上の降水量が何回かあり驚きましたが、
今回の名瀬の1日622mmにはビックリです。
30cm物差し2本分の厚さの水量が、雨となって降ってくるのですから大雨災害が出るのも当然でしょう。
この夏の8月2日に上田で豪雨により災害が発生しました。(1日の降水量は82mm)
床上浸水44戸、床下浸水108戸、土砂崩れが20カ所で起き、
国道18号など7カ所が一時全面通行止めとなりました。
この地域では1日の降水量が100mmを超えると何らかの災害が出ています。
さすがに622mmの降水量は想像もつきません。
今回の奄美での豪雨は秋雨前線に台風13号からの湿った空気が流れ込み、前線を活発化させたことによります。
また、台風14号も接近していますので動向に注意してください。
さて、同じ日本でも、北海道では雪が降ったり、近畿では木枯らし1号が吹き、(10月26日)
色々な季節が入り交じり、夫婦で風邪をひいてしまいました。皆さんも気をつけて下さい。
(信州民報 10月28日付け)
お盆過ぎの夕方には秋風が漂い、短い信州の夏を感じますが、
今年は様子が違い、なかなか涼しくなりません。
偏西風により天候は変化しますが、通常この偏西風は西〜東へ流れ、
ゆるやかに南北に蛇行しながら北半球を一周します。
ところが今年の夏の偏西風は例年より南北に大きく蛇行して流れたため、
北に寄って蛇行した地域では高気圧が発達し気温が高く、
南に蛇行した地域では低気圧が発達し、大雨となりました。
日本の猛暑は、偏西風が北に蛇行したため太平洋高気圧が発達した事と、
また、フィリピン近海の海面温度が平年より高く、
ここから発生する上昇流が太平洋高気圧で下降流となり、
この下降流が太平洋高気圧を更に発達させたという2点が挙げられます。
一方、世界に眼を向けると、
ロシアでは6月末からの記録的な猛暑が続き、最高気温が38℃以上になった地域があり、
あまりの暑さのためウォッカなどを飲み水遊びをして、1200人以上の方が水死しています。
また、泥炭地や森林で火災が多発し、(現在も燃えている)
モスクワはばい煙に覆われ、健康被害者が出ている状態です。
また、中国では北西部の甘粛省で大規模な土石流で1100人以上、
他の自治区では大雨による洪水で1400人以上の犠牲者が出て累計2億人の被災者が出ています。
パキスタン北西部でも洪水が起き、1600人以上の犠牲者と被災者は1400万人以上にのぼっています。
上田においても7月24日の突風により、
上田高校同窓会館のトタン屋根がはがれ周囲の民家に落下したり、
上田公園駐車場のヒマラヤスギが倒れ車を直撃しました。
更に、8月2日は菅平で1時間あたりの最大雨量58mmと8月の観測史上2位を記録し、
上田市古里でも1時間あたりの最大雨量57mmの雨量で、
床上浸水は44棟、床下浸水も108棟、土砂崩れが20カ所で起き、
国道18号など7カ所が一時全面通行止めとなりました。
世界どころではなくこんな身近なところでも気象災害が発生し、
人事ではいられません。
気象庁から出されている長期予報によると、まだまだ厳しい残暑が続きそうですので、
熱中症には気をつけて下さい。
(信州民報 8月17日付け)
「暑いですね〜」梅雨が明けた7月17日から一気に暑くなり、
7月末までの間に熱中症による死者が全国で200人を超える異常な状況が続いています。
グラフは各地域の一日の気温変化と、(暑かった7月20日〜24日の平均値)
熱中症に対する気温の指針「28℃以上が警戒、31℃以上が厳重警戒」を示します。
東京はほとんど一日中警戒以上の気温となり、9時〜19時までは厳重警戒です。
熊谷も同様の傾向で昼過ぎには体温以上の気温となっています。
朝晩に冷え込む上田近辺は過ごし易い場所と言えますが、
昼には厳重警戒気温になるので体を休め、水分補給が必要です。
また、体温調整で重要なのが汗です。
汗が蒸発する時、気化熱※)により皮膚が冷やされ体温が一定に保たれます。
しかし、湿っている時は汗が蒸発しにくく、体温が体の中にこもり熱中症になることがあります。
湿度が高く湿っている時は、気温が低くても注意が必要です。
8月の関東甲信越地方の一ヶ月予報によると、
「期間の前半を中心に気温の高い状態が続く見込み」と言うことで、
この暑さはまだまだ続くでしょう。
暑い時は無理をせず、エアコンや扇風機を上手に使い、
こまめな水分と塩分の補給を行い、この夏を快活に乗り切りましょう。
※) 気化熱:液体を、同温度の気体にするのに必要な熱量をいい、蒸発熱ともいう。
(信州民報 8月5日付け)
日本気象予報士会・北信越(北陸・長野・新潟)合同例会として、
5月22日に
東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所の見学会に参加しました。
新潟県の柏崎市から刈羽村にまたがり、日本海を臨む発電所は海岸沿いに3.2km、
陸側に向かい1.4kmの敷地を持ち、面積は東京ドーム90個分又はデズニーランド5個分の420万uあります。
発電所は7つの原子炉を持ち、全て稼動すれば合計出力は821万2千kwに達し、
長野県の電力総需要の3倍弱がまかなえ、世界最大の原子炉となります。
しかし、2007年7月16日AM10:13に発生した震度6強の新潟県中越沖地震により
全ての原子炉が緊急停止となりました。
その後復旧・耐震工事を行い、現在では6号7号の2機が稼動しています。
1号機から5号機においては現在も工事中で、
その間不足する電力量は以前稼動していた火力発電を再稼動してまかなっています。
見学は6号7号機の中央操作制御室、
そして発電用のタービンと7号原子炉です。
中央操作制御室では原子炉をコントロールしたり、カラフルなパネルにより稼働状況が監視できます。
発電用タービンは飛行機のプロペラの様な羽根が何枚も付いた高圧と低圧タービンがあり、
ここに水蒸気の圧力により回転し、発電機を回し電気を起します。
(プロペラ1枚が1.3m、タービンと発電機を連結するシャフトは68.5mにも及ぶ巨大な物です)
定期点検中の7号原子炉では水中で、
燃料棒を慎重に移動させている作業が目の当たりに出来て、緊張感が伝わりました。
原子力の発電時の燃焼にともなうCO2の排出量は、太陽光発電、風力発電と同様にゼロです。
温暖化対策として一番有効な設備と言えますが、
安全性の保障と使用済み核燃料棒の後始末に不安を感じます。
沖縄の問題もそうですが、色々と難しいですね〜。
(信州民報 6月3日付け)
太陽系惑星の中で、太陽を回る軌道や星の大きさが似ていることから地球と兄弟星と言われている金星。
(直径は地球の0.95倍、重さは0.82倍)
惑星の配置は太陽から水金地火木土天海の順で、金星は地球の内側を回り、地球に最も接近する惑星です。
この様な兄弟星の金星ですが、その大気の環境は地球とは全く違い、生物が住めるような星ではありません。
大気のほとんどが二酸化炭素(CO2)で覆われ、その気圧は90気圧で地球の90倍になり、水深900mの水圧に相当します。
更に温室効果ガスにより表面温度は460℃と高く、生物どころか亜鉛・すず・鉛などの金属でさえも解けてしまう灼熱の大地となっています。
その金星を目指して金星探査機「あかつき」が5月21日(6時58分22秒)に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。
(18日予定でしたが天候不良により延期されました。)
その目的は金星の大気の謎を解明することにあります。
産業革命以降、地球上の二酸化炭素は右肩上がりに増えている状態です。
金星と比べると圧倒的に少ないものの、その増加量は見過ごせません。
地球が金星のような温暖化の極限の星にならないためにも、観測の成功を祈ります。
5月16日撮影「月と金星のランデブー」
地球照と言い、月の欠けた部分が地球からの反射光で薄く見える。
(信州民報 5月21日付け)
開花したばかりのシダレザクラと、つぼみのソメイヨシノです。(4月4日、上田公園にて撮影)
今年から気象庁では桜の開花予想を行わず、代わりに民間の予報会社から発表されることとなりました。
つぼみの状態より、上田の開花日はウエザーニーズ社の予想した4月6日になりそうですね。
この時季は「春に三日の晴れなし」と言われるように天気の変化が早く、
桜の花に結び付けた季語などがたくさんあります。
早く咲けと花をせきたてるように降る春先の雨を催花雨(さいかう)と言い、
空が薄く曇ってきたら花曇り、穏やかな天気を花日和。
満開のころに吹く強い風を花嵐、そして花吹雪になります。
桜を散らしてしまう雨を桜流しと言います。
そして葉桜となり新緑の季節へと移り、また目を楽しませてくれます。
花見では寒の戻りの花冷えがあったり、
晴れた日の夜は放射冷却による冷え込みがあるので、夜桜には防寒対策をお忘れなく。
(信州民報 4月6日付け)
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予報会社 |
開花 |
満開 |
上田公園 |
ウエザーニーズ |
4/6 |
4/12〜 |
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気象協会 |
4/3 |
4/8〜 |
小諸懐古園 |
ウエザーニーズ |
4/12 |
4/18〜 |
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気象協会 |
4/10 |
4/16〜 |
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ソメイヨシノでの予想(予想日3/28) |
2月25日に関東南部、中国・四国、九州北部で「春一番」が発表されました。
春一番は、立春から春分までの間に、日本海を進む低気圧に向かって、
風速8m/s以上の東南東から西南西の風が吹き、
前日に比べて気温が上昇した時に発表されます。
25日の天気図と上田と東京の気温・風速をグラフに示します。
日本海上を東進する低気圧に向かって南風が吹き、
最大瞬間風速で上田が11.7m/s、東京が14.4m/s、
最高気温は上田が20.4℃東京が17.8℃と5月並の気温となり、春一番の条件にピッタリです。
低気圧に吹き込む暖かい南風により上田の朝の気温0.2℃が、
午後には20.4℃まで上昇しその差は20.2℃にもなりました。
これからの時季、朝と昼の寒暖差が大きくなるので体調管理には注意しましょう。
さて、地形の影響で風向風速が変化してしまう長野県の様な山国では「春一番」は発表されません。
しかし、海の向こうのカナダから銀や銅メダルの春一番が届きました。
たくさんのドラマが見られ、とても楽しかったバンクーバーオリンピックでした。
(信州民報 3月2日付け)
1月17日午後4時、浅間山の右側にお皿が何枚も重なったUFOの様な雲が見られました。
この時間帯の天気は快晴で雲はほとんど無く、浅間山から噴き上がる水蒸気とこの雲だけが目立ちました。
実はこの雲は「つるし雲」または「レンズ雲」と言って風と地形効果により発生します。
山の斜面を吹き上がった気流が山頂を越えて下降し、バウンドする様に押し上げられた時につるし雲が発生します。
つるし雲やレンズ雲は※富士山で良く見られ有名ですが、浅間山では珍しいと思います。
この雲が発生しやすい条件として、上空に強い風が吹き風向が一定で風下側に障害物が無いことが挙げられます。
この日の高層天気は高度1500mでは毎秒7mの北西風、3000mでは毎秒17m北西風が吹き、
風下の南東方向は障害物は無く、まさにつるし雲の発生条件と合っていました。
不思議な形のこの雲に出会えて幸せな気分でシャッターを押しました。
※ 富士山は、日本一高い山で、左右対称、周りに障害物が無いため気流が安定し、
つるし雲やレンズ雲が発生しやすい
(信州民報 1月20日付け)
気象庁で昨年12月に出された長期予報では、この冬は西高東低の冬型の気圧配置になりにくく、
暖冬傾向となり日本海側の雪が少ないという予想でした。
しかし、北海道から北陸までの日本海岸側では4年ぶりの大雪となっており、
長野県北部でも昨年暮れから今年にかけて毎日のように雪が降り、予想が外れました。
また、上田地域の気温を調べたところ平年値に比べ古里では少し暖かく、
菅平では寒い状況から現段階では暖冬とは言い難い状況です。
(古里と菅平にアメダスが設置されています)
二十四節気では1月5日の小寒(寒の入り)〜2月4日の立春(寒明け)までを、
「寒の内」と言い寒さの最も厳しい期間のことを言います。
特に1月20日の大寒は寒さのピークとなります。
インフルエンザ等、体調管理には気をつけて下さい。
さて、1月23日午後4時30分〜6時30分まで東御清翔高校にて
「お天気の話&月と冬の星座の観望会」が開催されます。
長野県内の気象予報士と同校同窓生により、
DVDや実験を交えた天気の話と屋上ドーム内の屈折望遠鏡(13cm)により月と星座観望を行います。
参加希望者は 東御清翔高校 Tel 62-0014まで連絡してください。
(信州民報 1月14日付け)
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