季節の話題より









 「雨はどのように降ってくるのだろうか?」という疑問に対し、

雲の中の小さな水の「つぶ」がくっつきあい成長し、これが落下して雨になる。
と、思っている人が多いようです。
 
 間違いではありませんが、
日本で降る雨の最初の状態は、ほとんどが雪やあられで落下してきます。(上空はマイナス数十℃の気温です)
これが0℃より高い空気中を落下してくる途中で解けて、雨となり地上に降ってきます。
冬は地上でも0℃以下の日が多く、解けずに地上に降ってきて雪となります。
 
 先日の14日に東御市滋野駅の周辺はみぞれが降り、標高の高い御代田・軽井沢では雪になったそうです。
日差しが出てきたので前方の御牧原を見ると、山の中腹に定規で直線を描いたような雪のラインが見えました。
このラインの標高は650〜700mで、ここを境に上層には雪が積もり、下層は雨又はみぞれとなりました。
 自然の温度計を見たようで、ダイナミックな感覚になりました。
 

 (信州民報  12月24日付け)

















 
 「京都のあざやかな紅葉が見たい」と思いつつ行った試しがありません。
そこで中軽井沢〜旧碓氷峠の紅葉狩りに出かけました。(10/19)
中軽井沢では燃えるような赤いもみじの紅葉が始まり、これからが本番になります。
旧碓氷峠の「めがね橋」ではぼちぼち色づいた程度でした。
 
 春から夏にかけ葉の光合成によりデンプン等の炭水化物を作り、木や実の栄養となりますが、
晩秋に向かい日が短く気温が下がると木は休眠状態に入ります。
そうなると葉の役目は終わり、葉と枝の間に「離層(りそう)」という仕切りが作られ、木と葉の間の栄養や水分の循環がなくなります。
ここから紅葉が始まります。
通常、葉は葉緑素のクロロフィルにより緑色ですが、葉の中には黄い色素のカロチノイドも含まれています。
光合成が活発に行われている時は葉緑素が勝っているため緑ですが、
休眠によりクロロフィルが分解されカロチノイドが目立つ事から黄色く色づきます。
また、葉に残った糖分やデンプンが化学変化し、赤い色素のアントシアニンという物質が出ることにより赤く色づきます。
 
 夏から秋にかけての日照時間が多く、最低温度が8℃以下になり、昼と夜の温度差が激しい場所であざやかな紅葉が見られます。
底冷えのする京都盆地で紅葉が素晴らしい訳がうなずけます。
 
 これからは紅葉と夕焼けが心に染みる時季ですね。
 
 (信州民報  10月30日付け)










 年に1度の車山気象レーダー観測所の一般公開が8月7日に行われました。

 このレーダーは全国で20箇所に配置され、日本全体の降水強度分布図を作成します。
最近はゲリラ的な集中豪雨が多いために10分間に1回更新されるレーダー情報は重要な位置付けになっています。
 
 標高1925mの車山山頂に建てられたレーダー観測所は3階建ての構造で、
3階の丸いドームに直径4mのパラボラアンテナのレーダーが毎分4回の速さで回転し、
電波を発射させ雲や雨粒に当り、はね返って来る電波を受信しています。
2階は受信した電波のはね返って来る時間と強度から、
どこでどのくらいの強さの雨や雪が降っているか計算しています。
 天気予報でお馴染みの降水量を表した図は
レーダーとアメダス(降水量等を測る機器)とを組合せ、
現在の降水強度分布と60分先までの降水ナウキャストが予報できます。(降水短時間予報では6時間先まで予報されます)
 
 北京オリンピックの開会式で晴天を確保するために、
中国当局は五輪史上初の「人工消雨作戦」を行いました。
北京に来ると予想されている雨雲に液体窒素やヨウ化銀の1000発以上のロケット弾を撃ち込み、(雨粒を成長させすぐに降水させる)
北京市郊外に人工的に雨を降らせて、会場のある北京市では無事夜空に花火を上げることが出来ました。
 
 レーダーを含め天気予報は気象状況の把握と今後の予想を行いますが、
近未来において「○○地域に午後1時から雨を降らせます」という予報が出るかも知れませんネ?

(信州民報  8月13日付け)

 







 
 「草に臥(ね)て 青空見れば 天と地と 吾との外に何物もなし」
作:藤原咲平(
ふじはら・さくへい 明治17年−昭和25年上諏訪町生まれ) 
この歌が刻まれている碑が、霧ケ峰のグライダー滑走路脇にあります。
なだらかな山頂は歌の様に、青空と草原の大地と黄色いニッコウキスゲが咲き始めていました。
 
 今年で41回目になる「藤原咲平先生をしのぶ会」が7月12日に霧ケ峰で催され、
ご遺族、教え子、諏訪市長と市の関係者、グライダー愛好家、気象台長、予報士会、一般の方55名が参加されました。
藤原先生は「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦博士の後任として東京帝大教授に就任、
その後第5代中央気象台長を勤めました。
 
 また、ヨーロッパ留学中にドイツでグライダーを見てから、
動力源が無くても上昇気流に乗り飛行できることに気象学的な興味を抱き、
霧ヶ峰の地形条件がグライダーに適していることを提唱し、昭和7年に霧ヶ峰グライダー研究会を発足させました。
その後は大学生を会員とするスポーツとして発展し、今日に至っています。
日本のグライダーの父と呼ばれたり、日ごろの献身的な活動などからお天気博士の愛称で親しまれました。 
 頭上に風を切るのグライダーの雄姿を見ながら式典や懇親会に参加でき、とても良い思い出となりました。

 追記:藤原咲平の甥に新田次郎、本名:藤原 寛人(ふじわら ひろと)がいたことは驚きでした。
 


(信州民報  7月30日付け)








 防災や気象について関心が持てるように「防災と気象フェスタ」が6月7日伊那市で開催されました。
今回は第2部のNHKテレビ「ニュース7」に出演している気象予報士の半井小絵さんの講演についてお話します。
 開場3時半、開演4時ということで、早目の3時ごろ会場に着いたのですが、すでに長い行列でさすが人気キャスターですね。
400席の会場はアッという間に一杯となり、ロビーのモニターを見る方が100名ほど出たそうです。
 演題は「気象情報の報道と私」で半井さんの一日の行動や番組の裏話などが聞けました。
  おばあちゃん子だった半井さんは、祖母が小学生だった昭和9年の室戸台風で校舎がつぶれ21名の方が亡くなった体験談などを聞いて育ち、
幼い頃から天気に興味を持ち、空を見上げることが好きになったそうです。
 
大学卒業後は日本銀行に勤めながら気象予報士の資格を取得し、
退職後、(財)気象協会に就職しNHKで活躍、現在は民間の気象会社に所属しています。
 半井さんのNHKで一番の思い出は2006年の紅白で気象解説をしたこと。
そして、キムタクに会釈したら返してくれたことが自慢の一つです。
 
 「ニュース7」出演時の衣装はスタイリストさんが考えてくれますが、
天気に合わせて温かいときは暖色系、また大雨のときはジャケットを着るなど緊張感を出すために工夫されているそうです。
 事前の天気図検討会では先輩の突っ込みがキビシク、本番以上に緊張します。
ここでの内容を原稿にし、暗記して本番に備えます。
 時には放送の直前に、持ち時間の90秒を半分に短縮されることがあり、
キャスターは「顔は平静、心臓ドキドキ状態」で、水面下で足をバタバタさせている水鳥状態であると例えていました。
 
 講演前に半井さんと一言だけ話が出来ました。
優しくとても感じの良い方です。
最近はタイマーを「午後7時28分」に合わせてしっかりテレビでチェックしています。
 
(信州民報  6月27日付け) 





 
 防災や気象について関心が持てるように「防災と気象フェスタ」が6月7日伊那市で開催されました。
第1部に「気象、環境おもちゃ箱」、第2部は気象と防災講演会ということで、
NHKテレビ「ニュース7」に出演している気象予報士の半井小絵さんが講演しました。
 
 今回は第1部の「気象、環境おもちゃ箱」についてお話をします。
市役所の市民ホールと広場で長野地方気象台、市職員、信州大関係者、市内の教諭のみなさんや
気象キャスターネットワークから日本テレビお天気キャスター岩谷忠幸さんや
長野オリンピックの気象情報で活躍された登内道彦さんがスタッフとして参加し、
各々のブースを持って、防災・気象機器の展示説明や実演、科学実験などを行われました。
 
 地震体験コーナーでは、体験者自身より外から見ている人の方が驚いてしまうほどの強力な揺れを(震度5〜6)体感していました。
ペットボトルで簡単に出来る気温測定計と雨量計は、夏休みの小学生の研究にもってこいの工作です。
ポリエチレン袋の下部に取付けたアルコールを湿した綿を燃焼させ、
熱で浮かす ミニ熱気球の実験は浮き上がったときは感動もので、
時々出前講座を行う私としてはせひ実演してみたいものでした。
 
 会場は家族連れが多く大盛況であり、感心の深さが伺えました。
 
 (信州民報  6月18日付け) 











5月連休に宇宙飛行士の毛利衛さんが館長を勤める日本科学未来館へ行って来ました。
 
 お目当てはプラネタリウムのメガスターUコスモスです。
製作者の大平貴之さんは天の川にこだわりを持ち、
ぼんやり見える星々を忠実に描き出そうとして、メガスター(数百万個の星)を製作しました。
通常のプラネタリウムでは、3万個程度の星を投影しますが、
メガスターUコスモスでは、500万個(最小12.5等星)の星を再現しています。 
 夜空に肉眼で見える星は6等星までの約8000個なので、
街明かりが届かない澄んだ山頂から見たようなリアルな天空が感じられました。
次回行くときは双眼鏡を持参し、肉眼では見えない星を観察しようと思います。
 
 日本科学未来館のシンボル展示としてGeo-Cosmos(ジオ-コスモス)があります。
これは直径6.5mの球面に約100万個のLEDが貼られた世界初の球体ディスプレーで
地球上の天気、火星、木星等を次々と映し出した立体画像を作ります。
その大きさと画像の鮮明さに感激しました。
 
 ロボットのASIMO(アシモ)が1日2回実演されています。
自らが考え行動する動き、愛嬌のあるしぐさや駆け足をする姿に
小学生から年配者までが釘付けになるひと時でした。
 
 他にもたくさんの展示ブースがあり、
じっくり見学するには数日間滞在したいほどの日本科学未来館です。
皆さんも出かける機会があるようでしたら、開館の少し前から並び、
入館後すぐにプラネタリウムやVRシアターの予約を済ませて、
それぞれの展示ブースを見ることをお勧めします。
 

(信州民報  5月10日付け)






 
 ♪ 甍(いらか)の波と 雲の波
重なる波の 中空を
橘(たちばな)かおる 朝風に
高く泳ぐや 鯉のぼり ♪ 
(瓦葺きの屋根が波のように広がり、空には雲が波打っていて、
その間の空を朝風に吹かれて鯉のぼりが泳いでいる。)
という内容の童謡「鯉のぼり」です。
 
 鯉のぼりは江戸中期から五月五日の端午の節句に、
男児の出世を願って家庭の庭先で飾られるようになったものです。
 風にあおられ泳いでいる鯉のぼりの姿は、5月の新緑や青空に映えて気持ちがいいものです。
この時の風力はどの程度あるかの目安を図に示しました。
見栄えのする鯉のぼりは、毎秒6m(砂ぼこりが立ち、紙片が舞い上がり小枝が動く程度)の風速が欲しいでしょう。
「風は息をする」と言われるように、強まったり弱まったりしますので、
平均風速が毎秒6mでも強いときは毎秒9〜12mになり、鯉のぼりの泳ぎに強弱が出て活き活きとします。
 
 5月の朝は比較的風が少なく、大地が暖まった午後に風が出ることが多いですが、
童謡では朝から風が吹き、更に鯉が高く泳いでいることから、毎秒8m以上の風速があったと考えられます。
また、上空の雲が波打っていることから、低気圧の前兆だったのかもしれません。
  
 5月連休に行楽で遠出することが多いと思います。
高速道路には吹流し(横風注意の目安)が設置されていますので
勢い良く泳いでいる姿を見たら、毎秒10m以上の風速があると思い、
スピードを抑えハンドルをしっかり握りましょう。
 


(信州民報  5月1日付け)

















 
 寒い日が多かったので我が家では、カキ鍋・豚汁・モツ煮などの日が続きました。
最近は中国の餃子騒動で冷凍食品が見直され、家庭の味が戻ってきているようで良いことですね。
 
 この寒さについて平年値と昨年・今年で比較しました。
昨年は約3℃高く暖冬でしたが、
今年は約1℃低い気温となっています。(1月下旬〜現在)
つまり、昨年に比べ今年は約4℃も低く、寒さが身にしみる理由が分かります。
 
 一方、1月23・29日、2月3・9・23日と雪が積りました。
2月23日は冬型の気圧配置のときに降る下雪でしたが、他は全て上雪となりました。※)1
この上雪は太平洋側の低気圧が発達し、上空の寒気が重なったことにより降ったものですが、
通常は冬型が緩んだ3月の春先に多く、ドカ雪をもたらします。
 今後一ヶ月は平年より気温が少し高いと予報され、
且つ寒さのピークも過ぎたので先ずは一安心と思います。
 
 でも暖かくなると怖いのが杉花粉です。
東日本では昨年より多いと予想されていますのでマスクでガードするか、出歩かない方が賢明ですね







 


(信州民報  3月1日付け)









 
 今年は2年ぶりに諏訪湖に御神渡りが出現し、
2月2日に諏訪市八剣神社による神事が行われるということで行ってきました。
 
 下諏訪から湖岸を通り、間欠泉センター〜ヨットハーバー〜岡谷の湊地区まで行く間に5箇所ほどの御神渡りが見られ、
(何箇所も御神渡りが出来ているんですね〜発見です。)
その中でも湊地区は、氷が10〜50cmほどせり上がり、延々と続き一番見応えがありました。
出かける前はどこに行けば見られるか不安でしたが、
御神渡りのある所には観光客や地元の方がたくさん集まっているのですぐ分かりました。
 
 湖面にせり上がった氷の様子から、神社に伝わる過去の記録と照らし合わせ一年の世情を占います。
それによると、「今年の天候は不順だが作柄は良く、世相は不安なものの明るい兆しになる。」
とのことです。
 
 八剣神社には1443年以降の御神渡りの記録があり
2008年までの565年の間に御神渡りが見られなかったのは69回。
その内の14回は平成以降です。
 
 初めて見た御神渡りはとても雄大で、毎年訪れたいと思いました。
さあ、来年は見られるでしょうか?
 


(信州民報  2月5日付け)















 
 平成19年は暖冬に始まり、8月16日には熊谷と多治見で40.9℃の、過去最高気温となる猛暑になりました。※1
日本の年平均気温の平年差は+0.85℃で、
統計を開始した1898年以降では1990年、2004年、1998年に次いで4番目に高い値となり、※ 2
また世界においても年平均気温の平年差は+0.67℃で、
統計開始(1880年)以来、最も高くなりました。
 
 住友生命恒例の「創作四字熟語」入選50編の中に、
猛暑に関するものが3編あり、夏の暑さを思い出し納得します。
 そして、世界に目を向けると、地球温暖化防止に取組んでいた、
アル・ゴア前米副大統領がノーベル平和賞を受賞し、
CO2の2大排出国の米国と中国に国際協力を促したことが記憶に新しいです。
 
 さて、今年は南米のペルー海域の水温が平年に比べて低くなる、
ラニーニャ現象が春まで続く可能性が高いことから、
日本では昨年より冬らしくなると予想されます。
 
 西高東低の気圧配置の時は、
東信地域では気温は低いものの晴れて星が高く見えます。
まさに星高冬低(自作:創作四字熟語)ですね。
 
  ※1 1933年山形県山形市で40.8℃が過去最高気温(フェーン現象が原因)
  ※2 気象庁ホームページより抜粋(平成19年12月13日発表)
     (平年差=H19の平均気温−平年値) 平年値は、1971〜2000年の30年平均値を使用

 
 (信州民報  1月8日付け)
 


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